5-ALAについての情報共有④

➁5ALA
摂取した5-ALAはどうやってヘムになるの?
5-アミノレブリン酸の合成経路多くの場合、生体内に存在する物質は、ただ飲むだけではその本来の居場所や効果を発揮すべき場所にたどり着くことができません。ガソリンを車の後部座席にまいても走り出さないように、生体内物質も適切な方法で供給されて初めて機能することができます。
しかし、5-アミノレブリン酸(5-ALA)の場合、2つの「偶然」が重なり合うことにより、口からの摂取によりヘムへの変化という本来の機能を発揮することができます。
1つめの「偶然」は、体内で作られる5-ALAが、奇妙な方法でヘムへと組み立てられる点です。
5-ALAはミトコンドリアという細胞内の小器官で生まれますが、生まれた5-ALAは一度ミトコンドリアの外に吐き出されます。外でほぼ最終形まで組み立てられた後、なぜか再びミトコンドリアへ取り込まれ、最後のステップである鉄(鉄原子)の結合によりヘムが完成します(下図)。なぜこのような一見無駄な動きをするのかはっきりと分かっていませんが、はるか太古、ミトコンドリアは我々に「寄生」する別の生物であったものが、進化の過程で単独で生きる術を失い、我々の中の小器官へと変化したことと関係しているのではと考えられています[4]。
我々の祖先が、エネルギーを大量に作る能力を持つミトコンドリアを使役するために、その能力の一部を奪い取ってしまった結果、ヘムを組み立てる途中のプロセスが「我々側」、つまりミトコンドリアの外で行われるという奇妙なルートを辿るのかもしれません。
2つめの「偶然」は、5-ALAの大きさです。通常、5-ALAのような水に溶けやすい物質は細胞を通り抜けることができないのですが、5-ALAはタンパク質(食物)が分解されてできるアミノ酸が二つ連なった構造(ジペプチドと呼ばれます)とちょうど同じくらいの大きさ、構造であるため、細胞表面にあるジペプチド用の入り口(トランスポーターと呼ばれます)を通って細胞内に入り込むことができるのです[5] 。
この二つの「偶然」により、飲んで取り込まれた5-ALAは体内で作られた5-ALAと細胞内/ミトコンドリア外で混じりあい、ヘムを構成することができます。この「偶然」が果たして本当に偶然なのか、それとも必然、つまり進化の上でこの性質が生存競争においてなんらかの理由で有用であったためなのかは、神のみぞ知るといったところでしょうか。
いずれにせよ、我々は5-ALAを口から摂取することによりその恩恵を受けることができるように設計されているのです。
引用文献
4.Martin WF, Mentel M. The Origin of Mitochondria. Nature Education. 2010;3(9):58.

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